犯罪白書(平成22年版等)によると「勾留請求却下率(検察官が勾留請求した被疑者人員に占める裁判官が勾留請求を却下した人員の比率)の推移は」下記のとおりであり、「平成15年から上昇傾向にある」ということです。 0.1%台だったのが1.07%へと比率だけでみれば、10倍となっているようです(絶対数としては、多くはありませんが)。

勾留請求却下率の推移

※平成22年版犯罪白書より引用

 私(川合)の感覚でも、勾留請求の却下率は上昇していると思います。 私(川合)が弁護士になった平成5年頃は、否認している被疑者について、裁判官の勾留質問の前に意見書を提出し、裁判官に面談の上、勾留請求却下をしてもらうよう説得しても、ほとんど、勾留請求却下がされるという例は聞きませんでした。
 しかし、平成19年頃、私(川合)の記憶では、周防正行監督の「それでもボクはやってない」が上映された後くらいから、勾留請求却下が多くなり始め、昨年(平成23年)は、私が経験しただけでも、2件の勾留請求却下がありました。

 さらに、このように、勾留請求却下率が上昇したためか、検事も勾留請求を行うことに慎重になってきているようにも感じます。 やはり、勾留請求却下をもらうということは、検事にとっては、自分の見立てを否定される、あるいは、組織内でマイナスの評価となるのでしょうか(友人の検事か、検事を辞めた友人に聞いてみようとは思いますが)。

 別のところにも記載しましたが、①警察が被疑者を逮捕した場合、48時間以内に検察官へ送致しなければ釈放しなければなりません(刑事訴訟法203条)。 そして、②送致された検察官は、24時間以内に勾留請求(または公訴の提起)をしなければ、当該被疑者を釈放しなくてはなりません(刑事訴訟法205条)。

 警察が逮捕しないことはありますし、逮捕しても送致せず、釈放することもあります。 ただ、送致するということは、当然、勾留請求が行われることを予定していると考えられます。

 むろん、従前も、警察から送致されても検察官が勾留請求をしない場合はあり、私が担当した事件でもそういうものはありました。 ただ、そのようなケースのほとんどは、罪を認めているケースだったと思います。 罪を否認しているケースの場合、客観的には、証拠が十分ないと思われるケースでも(あまり証拠がないのはそもそも逮捕もされませんので)、勾留請求をした上で取調等行い、勾留期間満了時に処分保留の上、釈放等していたように思います。

 ただ、昨年(平成23年)、私(川合)が取り扱った案件でも、2件、否認している案件で、検察官が勾留請求を行わなかった事案がありました。 1件は、かなり特殊な事案であり、従前の感覚でも勾留請求はしないかなと思われるものでしたが、もう1件は、従前だったら勾留請求するのではないか(ただ、現在の裁判所の対応からすると勾留請求却下される可能性がかなりある)と思われるものでした。

 むろん、たった2件ですので、確定的なことは言えず、たまたまかもしれませんが、傾向として、検察官も従前より勾留請求に慎重になっているのではないかとも考えられます。

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