面会接見中に容疑者が横浜地検川崎支部か逃走(平成26年1月7日)というニュースが流れ、 面会接見が広く知られることとなりました。

私も、平成25年の10月ころ、同じ横浜地検川崎支部で、「面会接見」を行ったことがあります。
私の時は、6階の取調室ではなく、確か、5階位の資料室だったと思います。
やはり、検察事務官と警察官が立ち会いました。 ただし、このような警察官等の立会人のもとでの面会接見は、後で書くように、ある意味、刑事施設の不備からやむをえず行われるもので、通常の接見とは全く異なるものです。

憲法34条前段は、「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」とし、
これを受け、刑事訴訟法39条1項は、 「身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者 (弁護士でない者にあっては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。」 として、弁護人の接見交通権を定めています。

これらの条文の規定する弁護人による接見は、依頼者である被疑者・被告人と弁護士の秘密が保持できる状態(立会人がいない等)での接見を意味します。
そのため、通常の接見は、留置施設等の接見室で行われることになります。
立会人がいない状態での接見は、憲法の弁護人依頼権の保障に基づく権利として、弁護人及び身柄拘束されている被疑者・被告人にとって、基本的な権利です。
しかし、この点については、マスコミも含め、誤解されている方も多く、たとえば、先日、2014年(平成26年)1月1日に放映された人気番組「相棒12」のスペシャル「ボマー」でも、あたかも、弁護人の接見に警察官等の立会人がつくかのようなシーン、会話がありました。

この意味(立会人がつくかつかないか等)で、通常の接見といわゆる面会接見は、全く異なります。

では、なぜ、上記のような(警察官、検察官等の)立会人がいる面会接見が行われることがあるのでしょうか。

端的にいうと、ほとんどの地方検察庁の支部に接見室がないためです。

「法務省によると、昨年4月時点で全国50カ所の地検本庁には全て接見室件が設けられているが、203カ所ある地検支部の場合、接見室件があるのは3割の59庁にとどまる。川崎支部と同様の取り扱いをしている支部も多いとみられる。」(毎日新聞 2014年01月09日)というように、地方検察庁の支部(川崎もそうです)の7割には、接見室がありません。

接見室がないことを理由に検察官が弁護人の接見を拒んだことについて、国倍請求が請求された事案において、最高裁判所平成17年4月19日判決は、

1 弁護人から検察庁の庁舎内に居る被疑者との接見の申出を受けた検察官は、同庁舎内に、その本来の用途、設備内容等からみて、検察官が、その部屋等を接見のためにも用い得ることを容易に想到することができ、また、その部屋等を接見のために用いても、被疑者の逃走、罪証の隠滅及び戒護上の支障の発生の防止の観点からの問題が生じないことを容易に判断し得るような部屋等が存しない場合には、接見の申出を拒否することができる。

2 検察官が検察庁の庁舎内に接見の場所が存在しないことを理由として同庁舎内に居る被疑者との接見の申出を拒否したにもかかわらず、弁護人がなお同庁舎内における即時の接見を求め、即時に接見をする必要性が認められる場合には、検察官には、捜査に顕著な支障が生ずる場合でない限り、秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめ、弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。

としており、たとえ、接見室がなく接見を拒んだとしても、検察官は、「秘密交通権が十分に保障されないような態様の短時間の「接見」(面会接見)であってもよいかどうかという点につき、弁護人の意向を確かめる」義務があり、「弁護人がそのような面会接見であっても差し支えないとの意向を示したときは、面会接見ができるように特別の配慮をすべき義務がある。」としているのです。

弁護人としては、このような「面会接見」では、事件についての核心的なことはなかなか話せず、せいぜい手続き的なことを行うのみで、あまり望ましいものでは、ありませんが、全くないよりは、ましというものです(特に緊急の用件がある場合などでは)。

検察庁、警察署としても、このような面会接見よりは、通常の接見の方が、いろいろ望ましい(例えば、接見室による接見であれば、今回のように逃走されることはなかった)ので、結局、このような面会接見が行われる理由は、国に接見室を作る予算がない(あるいは、その意向がない)ということにつきます。

これは、警察署における接見でも同様で、23区内であっても、複数の接見室があるのは、東京湾岸警察署、原宿警察署等、数えるほどで、ほとんどの警察署には、接見室が1つしかなく、接見希望の弁護人が複数いるばあいは、2~3時間待つことも、ままあります。

この逃走については、もう一つ意外な法律上の問題があります。

逃走した容疑者には、どのような罪が成立するか?
この逃走した容疑者には、この逃走したことについて、どのような罪が成立するのでしょうか。

この容疑者は、 「容疑者は2日未明、別の男(20)と共謀し、川崎市麻生区で、女性会社員(21)を乗用車に連れ込んで監禁し暴行。15万円を奪ったなどとして6日に逮捕されていた。強姦容疑については否認している。」 (東京新聞 平成26年1月7日)

と報道されていますので、逮捕後、勾留請求を行うための検察官の取調をうけるために、地検川崎支部に来ていたようです。そして、その後、弁護人との面会接見の際に、逃走したようです。
本来であれば、検察官の勾留請求の後、裁判所に行き、勾留質問を受け、勾留請求の決定あるいは、勾留請求却下の決定を受けていたことになります。

さて、刑法は、下記のように、逃走罪(97条)及び加重逃走罪(98条)を規定しています。

加重逃走罪(98条)が適用されるためには、行為として、「拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀して、逃走したとき」が必要ですので、今回の逃走については、適用が難しいと思います。

では、逃走罪(97条)が適用されるかどうかと考えると、逃走罪(97条)は、その対象となる人物については、「裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者」としていますが、今回は未決の場合ですが、この場合は、被疑者又は被告人として、勾留状の執行により拘禁されている者をいう(札幌高裁昭和28年7月9日高集6-7-84)と解釈されてきました。

97条の次の条文である98条(加重逃走罪)は、その対象となる人物について、①「前条に規定する者」又は②「勾引状の執行を受けた者」の二つを定めていますが、逮捕されたが勾留請求される前の者(本件の容疑者等)は、②「勾引状の執行を受けた者」に含まれることから、①「前条に規定する者」には、逮捕されたが勾留請求される前の者は含まれないと解釈されます。
そうだとすると、①「前条に規定する者」としている以上、97条の対象には、逮捕されたが勾留請求される前の者は含まれないと解釈されるというものです。

したがって、今回の容疑者は、97条でも処罰されないことになってしまいます。 

第97条 (逃走罪) 裁判の執行により拘禁された既決又は未決の者が逃走したときは、1年以下の懲役に処する。
第98条 (加重逃走) 前条に規定する者又は勾引状の執行を受けた者が拘禁場若しくは拘束のための器具を損壊し、暴行若しくは脅迫をし、又は2人以上通謀して、逃走したときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

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