略式請求は、刑事訴訟法461条~470条に規定された手続きで、簡易裁判所が、その管轄する事件について、検察官の請求 により、公判手続を経ないで、検察官が提出した証拠のみを審査して、100万円以下の罰金又は科料を科す簡易な裁判手続です。

刑事裁判は、短いものであっても1~2ヶ月、長いものであれば数年、十数年と続くこともあり、被疑者(被告人)の 負担も重いものがあります。
そこで、
①生命・自由に対する刑罰を科するものではないこと、
②公判手続に比べて必ずしも被告人の利益を害するものとはいえないこと、
③正式裁判の請求により公開裁判を求めることができることなどから、このような略式手続が認められています。

検察官は、取り調べた被疑者に対し、あらかじめ、略式手続を理解させるために必要な事項を説明し、略式命令ではない 通常の公判を受けることができる旨を告げた上、略式手続によることについて異議がないかどうかを確認しなければなり ません(刑訴461条の2第1項)。
異議がない場合、は、簡易裁判所に略式命令請求書を提出することになります。
この略式命令請求書には、検察官の告知手続書及び被疑者の略式手続によることについて異議がない旨の書面(申述書) を添付しなければなりません(刑訴461条の2第2項、462条2項、刑訴規288条)。
この際には、検察官は必要があると考える書証及び証拠物を裁判所に提出することになります(刑訴規289条)

検察官から、略式命令の請求があった場合、裁判所は、その事件が略式命令をすることができないものであり、又はこれ をすることが相当でないものであると思料するときは、通常の規定に従い、審判しなければならないとされています (刑訴463条)。

いままで、検察官からの略式命令の請求があったにも関わらず、簡易裁判所がこの規定に基づいて通常訴訟にしたという 例は、少なくとも私が知る限りはありませんでした。
しかし、近時、平成22年12月28日、取り調べで男性を怒鳴ったとして脅迫罪で略式起訴された大阪府警東署の警部補に ついて、大阪地方検察庁が大阪簡易裁判所に対し、略式請求をしたのに対し、略式命令は不相当と判断した例がありまし た。

裁判所が略式命令をすることができ、しかもそれをすることが相当であると考えた場合には、公判手続を経ないで略式 命令を発しなければなりません(刑訴464条)。

このように、この手続きにより公判前に裁判所から出される命令を略式命令と言います。
略式命令を受けた者または検察官は、その告知を受けた日から14日以内であれば正式裁判の請求をすることができます (刑訴465条1項)。
略式命令は、この正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生じること になります。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも同様です(刑訴470条)。

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