刑事訴訟法は、246条本文で、「司法警察員は、犯罪の捜査をしたときは、この法律に特別の定のある場合を除いては、速やかに書類及び証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない。」と定めています。

しかし、初犯の数百円の万引き等のすべての事件が検察庁に送致されては、検察庁がパンクし、とても処理することはできなくなってしまいます。

そこで、246条但書「但し、検察官が指定した事件については、この限りでない。」としては、例外として、「書類及び証拠物」を検察庁に送致しなくてもよいとされています。

ここで、「検察官が指定した事件」にいわゆる「微罪事件(びざいじけん)」及び反則金が納付された交通反則事件があります。

通常の事件は、警察から検察へと送致された後、検察官が起訴するか否か等の処分を決定します。「微罪事件(びざいじけん)」については、警察は、送検せずに刑事手続を終了させることもできます。このような処分を、「微罪処分(びざいしょぶん)」と言います。

 微罪事件(びざいじけん)・微罪処分(びざいしょぶん)については、下記の国家公安委員会の「犯罪捜査規範」に定められています。

微罪事件(びざいじけん)とは、「①被害額僅少かつ犯罪軽微で、盗品等の返還その他被害の回復が行われ、被害者が処罰を希望せず、かつ素行不良者でない者の偶発的犯行であって、再犯のおそれのない窃盗、詐欺又は横領事件及びこれに準ずべき事由がある盗品等に類する事件、②得喪の目的である財物が極めて僅少かつ犯情も軽微で、共犯者の全てに再犯のおそれのない初犯者の賭博事件、③検事正が特に指示した特定罪種の事件」(安冨潔著「刑事訴訟法」225頁)である。したがって、初犯の万引きであっても、10万円を超えるようなものについては、微罪処分は困難であるし、再犯についても同様です。

 少年事件については、全部の事件を検察に送致されることとなっているため、微罪事件・微罪処分はありません。

 なお、微罪処分については、警察は、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を1月ごとに一括して、微罪処分事件報告書により検察官に報告しなければならない(犯罪捜査規範第199条)とされています。ただ、微罪処分とされたかどうかを検察庁に聞いても、上記のように一括した報告書により、警察より提出されているため、検索に時間がかかってしまいます。担当した警察署の担当に聞くのが一番早いです。

国家公安委員会「犯罪捜査規範」
第198条 (微罪処分ができる場合)
 捜査した事件について、犯罪事実が極めて軽微であり、かつ、検察官から送致の手続をとる必要がないとあらかじめ指定されたものについては、送致しないことができる。

第199条 (微罪処分の報告)
前条の規定により送致しない事件については、その処理年月日、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居、罪名並びに犯罪事実の要旨を一月ごとに一括して、微罪処分事件報告書(別記様式第十九号)により検察官に報告しなければならない。

第200条(微罪処分の際の処置)
第198条(微罪処分ができる場合)の規定により事件を送致しない場合には、次の各号に掲げる処置をとるものとする。
1  被疑者に対し、厳重に訓戒を加えて、将来を戒めること。
2  親権者、雇主その他被疑者を監督する地位にある者又はこれらの者に代わるべき者を呼び出し、将来の監督につき必要な注意を与えて、その請書を徴すること。
 3  被疑者に対し、被害者に対する被害の回復、謝罪その他適当な方法を講ずるよう諭すこと。
第201条 (犯罪事件処理簿)
 事件を送致し、又は送付したときは、長官が定める様式の犯罪事件処理簿により、その経過を明らかにしておかなければならない。

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