具体例による起訴前までの流れ

具体的なケースを仮定し、起訴前までの刑事事件の流れを解説します。

Aさんが、5月1日(月)午後3時に東京都の条例である「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」違反(痴漢)の 罪の疑いから逮捕状で警察官(司法警察員-以下「B警察官」とします)に逮捕されたとします。

このときB警察官は、Aさんに対し、犯罪事実の要旨(どのような犯罪で逮捕されたか)及び 弁護人が選任できることを告知(教えること)するとともに弁解の機会を与えなければなりません(刑訴203条)。

なお、逮捕の目的について、多くの一般の方々は、テレビでの刑事ドラマから、 取り調べの目的のため逮捕がされていると考えていられますが(また、実際の運用もそれに近い場合がありますが)、 法律的には、逃亡又は罪障隠滅のおそれを防止することにあり、取り調べは逮捕の目的ではありません。 (最高裁判所 昭和45年9月16日判決 民集24-10-1410)

Aさんが検察に送致される場合、東京都内であれば、通常、5月2日(火)に検察庁に連れて行かれ、 検察官(以下「C検察官」とします)と面接することになります。

この面接の際、C検察官はAさんに弁解の機会を与え、その言い分を聞かなければなりません(刑訴205条1項)。
C検察官は、S木さんについて勾留(こうりゅう)の請求をするか、釈放するかを決めなくてはなりません(刑訴204条3項・同205条4項)。

また、勾留の請求をする場合は、弁護人以外の者と会うことを禁じる接見禁止決定を求めるか どうか決めなくてはなりません。

勾留の請求をすると決めたときは、C検察官は、通常2日、裁判所に対し、必要書類を添えて、 勾留の請求を行います。

すると、翌3日(水)、Aさんは、裁判所に連れて行かれ、裁判官と面接をすることになります。

裁判官は、被疑者(ひぎしゃ)に対し、疑いを掛けられている犯罪事実を告げて、これに関する陳述を聞きます(勾留質問 刑訴61条)。
その上で、勾留状を出すか、その請求を却下するか決めることになります。

勾留請求が却下された場合は、検察官が準抗告で争う場合を別として、 被疑者は直ちに釈放されることになります(刑訴207条4項)。

裁判官が勾留請求を認めた場合は、まずは初日である5月1日(月)も含めて10日間、 つまり、5月10日(水)までの勾留が認められることになります。

この検察官への送致から裁判官の勾留決定の流れの中で、Aさんの調書等の資料は、 警察から検察庁、裁判所へ行きますので、勾留決定後、これらの資料は、裁判所より、検察庁を通じて、警察へ戻されます。
そして、警察が、さらに被疑者の取り調べ、実況見分調書の作成等の捜査を進めていくことになります。

当初の10日間では結論がでない場合は、5月10日(水)前に、検察官より裁判所に勾留延長の 申し立てがされることになります。
このため、5月8日(月)前後に、Aさんは、検察庁に送られ、検察官の取り調べを受けることになります。

検察庁に送られる日は、捜査の進捗状態、曜日等により、ある程度ずれることになります。

その上で、裁判官により勾留延長が認められると(多くの場合、認められてしまいますが)、 10日間の勾留延長の場合には、20日(土)まで、勾留の期間が延長されることになります。

逆に言えば、C検察官は、20日(土)までには、Aさんに対し、公訴の提起(即決裁判を含む)、略式請求 又は不起訴処分のどれを行うかを決めなくてはなりません。

ただし、この場合、20日は土曜日ですので、現実には、検察庁内部の決済との関係で、 19日(金)までには(多くの場合18日)、決めなくてはならないことになります。

この約23日間の期間(複数の罪が問題となっている場合、拘束期間が延びることについては、前頁の刑事事件の流れ(逮捕から勾留まで)のとおりです) は、身体を留置場で拘束されている方にとっては大変長い期間です。

しかし、示談を行うとしても弁護士にとっては、ある意味大変短い期間です。

法律に違反したことを認め、示談により、不起訴等を求める場合、まず、示談を行うためには、被害者の氏名・連絡先を知らなければなりません。
むろん、被疑者の方(前記の例え話で言えばAさん)や、その家族の方が、警察・検察に聞いても通常教えてもらえません。

弁護士が弁護人になれば、少なくとも、警察・検察が自分たちの考えとして教えないということはありません (警察が警察から教えていいかどうかはいえないので、処分を決める検察に聞いてくれと言うことはあります)。

けれども、特に事件直後は、被害者の方が警察・検察に弁護士にも氏名・連絡先を教えないようにという意向を示され、 その意向により、警察・検察が弁護士にも氏名・連絡先を教えないということもあります。

被害者の氏名・連絡先を知るためにも、時間を要する場合(被害の態様等により被害者の怒りが強く教えてもら えない場合もあります)があるのです。

また、被害者の氏名・連絡先がわかったとしても、いきなり、電話して、示談がその電話でまとまるというケースはまれであり、 やはり、被害者の心情を考え、手紙・電話等で、アポイントを取ってからお会いするのが正攻法です。

さらに、1度会ったからといって、すぐまとまるとは限らず、むしろ、2~3度お会いしなくてはならないことも多いのですが、 被害者も、勤務時間の関係から、休日しか会えないということもあり、時間的には、前記の23日間ではかなり苦しくなるケースも多々あります。

加えて、前記にも書きましたとおり、23日間も丸々使えるわけではなく、曜日の関係があります。
前記の具体例では、当初の逮捕日が、月曜日と通常考えて、もっとも、平日が多い場合を例としてあげました。

その場合でも、勾留の満期日が5月20日(土)となり、最後の1日は使えないことになります。
被疑者に対する公訴の提起、不起訴等の処分を行うのは、検事ですので、弁護人も検事と交渉することになります。

しかし、検事が当該事件の内容を多少でも理解するのは、勾留請求の前に、被疑者が送致された時ですが、 この時は、資料も少なく、正直、検事が被疑者と話すのは、 15分~30分程度であり、事件は、ほとんど理解できる状態ではありません。

結局、検事が当該事件をある程度、理解するのは、勾留延長の前に、その延長を裁判官に申し立てるためもあって、 そこまで、捜査された警察の資料が検察庁に送られ、検察官が被疑者を取り調べた段階以降です。

また、この説明では、勾留請求の前に被疑者を取り調べた検事と、勾留 延長の前に取り調べる検事が同じ検事という前提ですが、そうであるならば、勾留請求の後であれば、 多少でも検事とも話はできますが、必ずしも、同じ検事が担当するとは限りません。

勾留の際に取り調べを行った検事と事後の担当の検事が異なるもっとも多いケースは、 最初の検察庁への送致が、土曜日又は日曜日に当たるため、その取り調べを本来の担当の検事ではなく当番の検事が行ったというケースです。

この場合でも、本来の担当の検事は決まっていますが、当該検事としては、担当となっていても、 資料も読んでおらず、被疑者とも会っていない状態ですので、事件については、全く理解できない状態です。

むろん、弁護人としては、この場合でも、警察の担当警察官と話すなどして、情報収集に努めますが、 前記のとおり、処分を決めるのは検察官ですので、実質的な交渉はできないことになります。

加えて、弁護士は、すぐに委任されるとは限らず、勾留延長の後に委任される場合もありますが、 この場合は、さらに、時間が少なく、弁護士としては、示談をしようとすると、時間がほとんどなく大変、 苦しい思いをすることもあります。

この観点からも、逮捕された場合は、弁護士に一刻も早くご相談していただくようお願いします。

初回相談は無料です。今すぐご相談ください

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