不起訴と罰金の違い

迷惑防止条例違反あるいは、傷害罪(暴行の内容が軽く、相手方の怪我も軽いもの)等の罪について、犯行を認めており、 示談が成立すれば不起訴となるが、示談が成立しなければ罰金(あるいは場合によっては起訴)となるケースがよくあります。

このようなケース、特に現在、勾留等されていないケースで、示談を行うかどうかに絡んで、 不起訴と罰金により生じる不利益がどのように違うのか、質問されることがあります。

不起訴処分のデメリット

不起訴(処分)とは、公訴を提起しない旨の検察官による処分です。 検察官は、警察から送致された事件及び自ら認識した事件について処理を行わなければなりません。 不起訴処分もこの処理の一つです。

この不起訴処分は、後で述べるいわゆる「前科」ではなく、「前歴」と呼ばれるものです。 なお、ここで述べる「前歴」も後で述べる「前科」も法律によりその内容が定義されていない言葉です。 ここでいう「前歴」とは、例えば、「前科・前歴」という風に前科とセットで使われることもあり、 前科に至らない犯罪歴すなわち捜査機関によって被疑者として逮捕され、書類送致され、又は微罪処分・不起訴処分された記録です。 このような意味での前歴は、捜査機関(警察・検察)内部のみの情報であり、 前歴のあることによって生じるデメリットは、再度犯罪を起こした場合、検察、裁判所により、 マイナスの評価(検察であれば、→罰金→起訴というようなより重い処分へ等)をされること程度であり、 前科があることにより生じるような法律上の制限を受けることはありません。 ただ、捜査機関(警察・検察)に記録として保有され続けることになります (検察における犯歴の管理については、「犯歴事務規定」参照)。

罰金とは

罰金とは、「一定の金額の剥奪を内容とする財産刑の一つ」のことです。前記のとおり、 「前科」は、法律上の用語ではありませんが、一般的には、「裁判所により有罪の確定した判決又は、 略式命令手続きを受けた経歴があること」を言います。 この意味では、罰金も前科の一つです。

罰金(刑)を受けた場合の法律によるデメリット

罰金の前科があることにより、資格について制限が加えられる場合があります。 たとえば、古物営業の許可については、「第31条(古物営業法上の罪)に規定する罪若しくは刑法第247条(背任罪)、 第254条(遺失物等横領)若しくは第256条第2項(盗品譲り受け等)に規定する罪を犯して罰金の刑に処せられ、 その執行を終わり、又は執行を受けることのなくなった日から起算して5年を経過しない者」については許可が認められません(古物営業法第4条2号)。 罰金は相対的に軽い刑罰ですので、許可等が絶対的に認められないのは、罰金の原因となった法律が当該資格に密接に関係する場合です。

しかし、医師(医師法4条3号)、歯科医師(歯科医師法4条3号)、薬剤師(薬剤師法第5条3号)、 保健師、助産師、看護師、准看護師(保健師助産師看護師法9条1号)は、「罰金以上の刑に処せられた者」一般について、 「免許を与えないことがある。」と裁量により資格を認めないことができることを定めています。

ただ、いずれにせよ、これらの資格制限は、 「罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで5年を経過したとき」 「刑の言渡しは、効力を失う」(刑法34条の2)とされており、上記期間を経過すれば、このような制限はなくなります。

その他の法令にも、罰金刑を受けた場合の資格制限等の規定があります。
このような資格を取得しようとしている方、あるいは、このような資格を取得している方の場合は、罰金刑は避けなければならないことになります。

罰金(刑)を受けた場合の事実上のデメリット

より多くの方に関わる罰金のデメリットとしては、就職、あるいは、会社に勤務している方に関わる事実上のデメリットでしょう。

就職の場合のデメリット

警察・検察庁への就職については、まさに前科・前歴の記録を保管している捜査機関ですから、 道路交通法上の速度違反等の罰金であれば別かもしれませんが、困難と考えられます。 もっとも、この点については、確証はありません。

検察、警察以外の公務員への就職については、国家公務員法第38条2号、地方公務員法第16条2号等は、 何れも公務員となれない場合として、 「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」を規定していますが、 罰金は、禁錮より軽い刑ですので、法律上は制限がないことになります。

ただ、就職の際ですので、どういう理由で就職できなかったかは明らかにされないため、罰金等の前科が理由であったとしてもわからないことになります。

問題は、一般の官公庁、地方公共団体等が就職試験を受けに来た個人の前科がわかるかが問題となります。
これについては、平成22年(2010年)2月20日の「共同通信」は、「犯罪人名簿、市町村任せ 国も実態把握せず」として、
「罰金以上の有罪判決が確定した人の氏名や罪名、量刑などを記載した「犯罪人名簿」を全国の市区町村が法的根拠のないまま作成、 本来の目的とされる選挙権の有無の確認だけではなく、官公庁からの犯歴照会にも常用しているのに、 名簿の様式や運用が統一されておらず、国も実態を把握していない」
と報じていますので、罰金の前科が理由となって就職できないこともありうることになります。

民間の会社に就職される場合問題となるのは、通常の履歴書には、賞罰を記載する欄があることです。 罰の範囲には諸説ありますし、高度なプライバシーの情報なので記載しなくてもいいという考え方もあり、見解が分かれています。 しかし、少なくとも「なし」と積極的に記載すれば虚偽記載となります。

むろん、民間の会社ではなかなか個人の前科を確認することは困難です。
ただ、飲み会の席で話してしまったりということは考えられ、また、アメリカへの短期の渡航の場合、9.11事件の後、 「ビザ免除プログラムを利用できない場合」として、「有罪判決の有無にかかわらず逮捕歴のある方、 犯罪暦(恩赦や大赦などの法的措置がとられた場合も含む)がある方、重い伝染病を患っている方、 過去に米国への入国を拒否されたり強制送還された方、そしてビザ免除プログラムで入国し、オーバーステイしたことがある方は、 ビザ免除プログラムを利用することはできません。 渡米するためには、ビザを取得しなければなりません。 ビザを持たずに入国しようとすると入国を拒否されることがあります。」(アメリカ大使館HP)とされています。 このため、自分だけ、ビザを取らなければならないことも考えられます。

会社等に勤務されている方のデメリット

公務員として勤務されている方については、国家公務員法第38条2号、地方公務員法第16条2号等は、何れもの欠格事由として、 「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」を規定していますが、 罰金は、禁錮より軽い刑ですので、法律上の欠格事由にはあたりません。 ただ、その罰金刑のもととなった犯罪によっては、処罰されたり、事実上退職を勧奨されたりすることになるかと思います。

民間の会社の場合は、就業規則に例えば、懲戒事由として、「刑事事件で有罪の判決を受けたとき」、 「社員は会社の名誉を傷つけ、または会社に不利益を与えるような言動および行為は一切慎まなければならない」 「暴行、脅迫その他不法行為をして著しく社員としての体面を汚したとき。」等規定されていることがあります。 罰金という刑罰を受けた場合、例え略式手続であったとしても、「刑事事件で有罪の判決を受けたとき」に当たる可能性は大きいです。 また、特に罰金の根拠となった犯罪の性質によっては「社員は会社の名誉を傷つけ、 または会社に不利益を与えるような言動および行為は一切慎まなければならない」 「暴行、脅迫その他不法行為をして著しく社員としての体面を汚したとき。」にあたる可能性もあります。

逮捕された場合は、会社にその事実がわかってしまうことがほとんどですし、例えその場は取り繕えても、 例えば、前記のアメリカの短期渡航の場合のビザとの関係で、事後的にわかってしまう可能性もあります。
罰金とはいえ刑罰を受けたか、不起訴処分で済んだかは、会社の対応・処分にも大きく影響を与える場合が多いです。

再犯の場合のデメリット

刑法34条の2は、「禁錮以上の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで十年を経過したときは、 刑の言渡しは、効力を失う。罰金以下の刑の執行を終わり又はその執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処せられないで五年を経過したときも、 同様とする。」としています。 ただし、これは、法律上の制限等についてであり、最高裁判所昭和29年3月11日第一小法廷判決(刑集8巻3号270頁 最高裁HP)は、 この条文により効力を失った刑の言い渡しであっても量刑判断の資料にすることができるとしています。
したがって、極端に言えば何十年たっていても犯罪を再び犯せば、今回罰金刑をうけていることも考慮され、刑が決められる可能性があることになります。

まとめ

以上のように、罰金は相対的には軽い刑罰とは言え、上記のような様々なデメリットがあります。これらの内、 不起訴であれば避けられるデメリットが問題となる方は、 できる限り、示談を行い、検察官に不起訴処分にしてもらうようにした方がいいことになります。

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