微物(繊維)鑑定については、鑑定の結果、被害者の衣服と同様の微物(繊維)が発見されなくても痴漢行為を否定されず、これだけでは、冤罪を防ぐことはできません。

DNA検査についても同様です。したがって、微物鑑定を行った場合でも、弁護士に相談することが必要です。

繊維片が検出されていなくても有罪

痴漢犯罪については、警察で、微物(繊維)の鑑定を行うことが一般的になっています。

テレビで、弁護士がこのような鑑定により、冤罪がなくなるかのような放送があったこともあり、これらの鑑定について、名前を聞いたことがある方も多いと思います。

しかしテレビでの報道と異なり、これらの微物鑑定で、冤罪がなくなるわけでもありませんし、効果は、非常に限定的です。

例えば、平成28年1月1日から同年12月末まで、東京地検によって東京地裁に公判請求された迷惑防止条例違反事件の電車等の公共の交通機関内等の痴漢事件は、全部で77件ほどです。
その内の75件が有罪となっています。

無罪の判決は2件のみです。
(城祐一郎著「近時における公共交通機関内等での痴漢事件の実証的研究-平成28年中の東京地検による公判請求事件の分析と検討-」刑法学論集第72巻第5号37頁以下)。
有罪になった痴漢事件の内、否認していた7件については、微物の鑑定で、繊維片が検出されていないことを弁護人が主張していますが、衣類に触れたとしても繊維が検出されないことはあり得る等の理由から有罪判決が出されています。

微物とは

そもそも、「微物」とは、微細な物質という警察用語であり、微物の鑑定は、1989年(平成元年)ころから、行われるようになりましたが、当初は、電車等の痴漢ではなく、窃盗、殺人等の通常の刑事犯について、行われていました。

というのは、犯罪が巧妙化するについて、犯人が、指紋、毛髪等を残さないようになり、覆面等をかぶり顔がわからないような場合が多くなったことから、犯人が知らず知らずに残す微物を鑑定しようということで、このような微物の鑑定を行うようになりました。

微物の鑑定では、採取した塗料・塗膜、プラスチック片・ガラス片、鉱物、繊維片等に対し、顕微鏡検査、顕微分光光度計による色調検査を行い、鑑定します。

電車などの公共交通機関内等での痴漢事件においては、被疑者の掌、甲等に粘着シートを付け、付着した繊維片等を採取して、鑑定することになります。

最近は、事実上拘束されてから鑑定するまでの間、手にビニールの袋を付け、微物が落ちないようにするケースもあるようです。

ただ、このような痴漢事件について、微物鑑定をすることについては、例えば、元京都府警察本部化学捜査研究所主席研究員平岡義博氏がその著作において、

「そもそも繊維鑑定は殺人事件や強姦事件など密室での犯罪の解明に適用してきました。痴漢事件のような不特定多数のオープンな環境を前提とした方法ではないのです。

もしそのような環境で繊維鑑定を適用するならば、バックグランドとして、どんな繊維片が浮遊しているか、その繊維片が乗客にどの程度不着するか、混雑の程度や乗車事件・距離との関係はどうか、何本以上ターゲット繊維が付着しておれば「同種繊維片が検出された」といえるか・・・・・などが検討されていなくてはなりません。

ほこりっぽい空間というのはそれだけノイズが高いということなので、そのノイズレベルが評価されないままでは「同種繊維が1本検出または「3本検出」といっても有意な(意味のある)本数とはなりえない」のです」(「法律家のための科学捜査ガイド」89頁以下)

と記載しているように、実効性が乏しく、また、上記の裁判例のとおり、裁判所においては、少なくとも、繊維片がでないケースについては、その結果はあまり重視されていません。

なお、最近は、痴漢事件において、被疑者の口内等を綿棒でぬぐってDNAを採取して、DNAの鑑定を行うことも一般化していますが、これは、被害者より被疑者のDNAあるいは、その逆が採取されることが、かなり珍しいため、これも、確実な決め手にはなりません。

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