無罪を主張する場合の弁護士の活動

痴漢事件において、無罪を主張する場合は、正当防衛(せいとうぼうえい)などの主張は考えられませんので、その主張 の内容は、そのような痴漢行為を行っていないということになります。

逮捕・勾留されている事案で、逮捕直後に弁護人として、委任を受けた場合は、裁判官に対して検察官が出した勾留 (こうりゅう)請求を却下(勾留請求を認めないこと)してもらうよう働きかけることが考えられます。

従前は、意見書を出して、裁判官と面接をしても、勾留請求却下を出してもらえることは少なかったと言ってもいいかと思います。
ただ、平成19年(2007年)頃より、特に痴漢事件を中心として、裁判所(東京の場合は東京地方裁判所刑事第14部勾留 状等の令状を担当する部です)が、従前よりも、勾留状請求却下の決定を出すようになりました。

勾留請求却下の決定を裁判官に出してもらえた場合は、被疑者の方は釈放されます。

ただし、検察官は警察から送致(そうち)された事件について、不起訴(ふきそ)も含め処理をしなくてはなりませんので、 釈放されたとしても、事件は続くことになり、弁護人としては、検察官の処分が決まるまで、様子を見るか、 あるいは、検察官に働きかけ、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」など無罪と同様の不起訴処分(ふきそしょぶん)を取得するように努力することになります。

勾留請求却下が認められず、勾留請求が認められた場合、被疑者の留置は続くことになります。

この段階で、勾留理由開示、準抗告等で、勾留に対し、裁判所に申立を行う制度がありますが、特別な場合を除いては、 裁判官・検察官に対する無罪主張のアピールという意味が主となります。

そのため、この段階では、検察官に対し、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」を理由とする 不起訴処分(ふきそしょぶん)にするよう働きかけることが、基本的な弁護活動となります。

情状等の観点から、起訴猶予(きそゆうよ)にするという不起訴処分もありますが、無罪を主張しているということは、 犯罪について、反省していないと検察官から見られるため、起訴猶予は、この場合認められません。

そこで、検察官には、客観的な状況等から、被疑者が、被疑事実(ひぎじじつ)(被疑者が行ったと疑われている犯罪事実) を行っていないことを説得しなくてはなりません。

しかし、公判の請求が行われるまでは、弁護人は、警察・検察の集めた捜査資料を全く見ることができません。

そのため、弁護人は、警察官・検察官と話をし、少しでも、情報を集めようとしますが、 やはり、依頼者(被疑者)の話がもっとも重要となります。

具体的に、電車に乗ったときの状況、被害者との位置関係等聞いていくことになります。

そして、少しでもそれを裏付ける証拠がないかを検討していきます。

むろん、依頼者(被疑者)が無罪であることを、述べてくれる目撃者がいればいいのですが、そのような方が例えいても、 探すのが困難ですし、仮に探せても協力してもらえるかどうかは難しいところです。

検察官が、「嫌疑なし」「嫌疑不十分」で不起訴処分をしてくれば、そこで、被疑者は釈放され、事件としては終了します。

しかし、これらを理由とする不起訴処分が認められない場合、検察官は、略式請求も即決裁判請求も行いませんので、 通常の公判の請求にが行われることになります。

公判の請求になると、保釈(ほしゃく)の請求が可能となります。保釈とは、保証金等を納付させて、 正当な理由なく出頭しないなどの場合はこれを没収するという制裁をつけることにより、被告人を釈放させる制度のことです。

保釈についても、従前は、裁判所は無罪主張をしている事件については、なかなか保釈を認めてくれませんでした。

しかし、裁判員制度の関係で、無罪を主張している事件についても、被疑者(ひぎしゃ)・被告人(ひこくにん)と 弁護人が十分に打ち合わせをできるよう前に比べれば、保釈を認めるようになってきています。

しかし、依然として、まだ、認められないケースも多いです。また、保証金も最低150万円程度、被疑者の資力によっては もっと高額な場合もあります(逃亡し保証金を没収されたら困る程度の金額でなくてはならないから)。

この保証金は、逃亡等しない場合は、あとで返却されるお金ですが、この金額の点からも、保釈は困難なケースが多いです。

強制わいせつ罪にしても、迷惑防止条例違反事件についても、裁判員裁判の適用される事件ではありません。

しかし、痴漢事件でも、無罪を争う事件については、公判前に、公判前整理手続(こうはんまえせいりてつづき)、 すなわち、第1回公判期日の開始前に事件の開始前に、証拠の開示とともに、事件の争点及び証拠を整理し、審理計画を 立てる公判準備の手続(刑訴316条の2第1項及び316条の3第1、2項)が行われることになるケースもあるかと思います。

公判においても、起訴前と同様、被告人が、問題となっている痴漢行為を行っていないことを、 立証するよう弁護人は努力することになります。

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